断熱材を厚くしたり、窓を高性能化することで断熱性能は高まります。
半面、建築費はアップします。
「断熱性能を高める必要があるのはわかるけど、どのくらいにしたらいいの?」とは、お施主様のみならず、専門家でも悩ましいところです。
宮崎建築では断熱性能をどのように考えているか、書きたいと思います。
「京王の家」の断熱性能は?
11月に着工した京王の家の断熱仕様をご紹介します。
天井:セルローズファイバー吹込み 300㎜
壁:充填 高性能グラスウール16K 120㎜+付加 90㎜
基礎立上り:フェノールフォーム90㎜
基礎スカート:EPS 60㎜
窓:YKK APW430(南面の一部 APW330)
換気:第一種ダクト式(全熱交換式)
一般的な充填断熱に加え付加断熱を施し、ガラスもトリプルガラスを採用しています。
仕様を見るだけでも、かなり高性能であることが分かります。
断熱材を厚くし、窓を高性能化をすれば断熱性能は向上します。
宮崎建築では熱計算ソフトQPEX(キューペックス)を使いUA値などの数値で断熱性能を確認しています。
計算の結果「京王の家」はUA値0.29となりました。
これはどのくらいの性能なのでしょう?
国が定める省エネルギー基準とは
国が定める「省エネルギー基準」というものがあります。
これは地域ごとに数値が定められており、京王の家が所在する新潟市の基準UA値は0.87となります。
京王の家はUA値0.29なので、省エネ基準と比較してもかなり高性能です。(数値の低い方が高性能。)
ちなみに、日本で最も厳しい基準である北海道は基準UA値0.46となっており、北海道の省エネルギー基準をも上回る性能ということが分かります。
UA値だけではわかりにくい
断熱材を厚くすることでUA値は向上します。
しかし、目的はUA値を良くすることではなく、家が暖かくなり、かつ省エネルギーで過ごすことです。
そのための一番の目安となるのは光熱費ではないでしょうか。
QPEXでは年間の冷暖房費のシミュレーションも行っています。
試しに京王の家の断熱構成を省エネ基準程度に変更し、光熱費の変化をみてみます。
今、「高断熱住宅を建てたい」という方が何となくイメージされるのは家中どこでも暖かく涼しい全館冷暖房の家ではないでしょうか。
省エネ基準くらいの性能でもエアコンの容量や台数を増やし、強運転を続ければ理論的には全館冷暖房は可能ですが、経済的な負担は大きくなります。
それは、電気代のみならず容量と台数を増やしたエアコンのイニシャルコストにも反映され、数年後のメンテナンスや買い替え費用も大きくなります。
住宅を高断熱化すると、小さなエアコンで家全体を空調できるため設備にかける費用も少なくなります。
省エネ基準くらいの性能の住宅の場合「全館暖房」は現実的ではなく、リビングなど人がいるところを人がいる間のみ暖房する「部分間欠暖房」(ぶぶんかんけつだんぼう)をすることになります。
その場合、浴室やトイレなどは寒い空間となってしまうので、別途暖房器具を用意する必要があるかもしれません。
HEAT20はUA値のひとつの目安
「国の省エネ基準を満たしても高断熱住宅とは言えない」ということがが何となくわかりましたが、では何を目安としたらよいのでしょう?
宮崎建築ではHEAT20(ひーとにじゅう)の基準を一つの目安としています。
HEAT20も省エネ基準同様、地域ごとに推奨UA値が定められており、G1グレードとG2グレードがあります。
新潟市は5地域と定められているためG1=0.48、G2=0.34となります。
宮崎建築では最低限G1グレードをクリアし、G2以上を推奨しています。
(下表参照)
G1以上となると、エアコン1台でも全館暖房が可能になります。
G2を超えると、更に快適性が高まり、光熱費も削減されます。
新築時であれば、省エネ基準からG2グレードまで性能を高めるために特別な工事は必要ありません。
断熱材を厚くしたり、窓を高性能化するだけで達することが出来ます。
ただし、建てた後から断熱性能を高める工事は何倍も費用が掛かります。
家をつくる際は熱計算ソフトでシミュレーションをし、光熱費などの費用対効果を見ながら可能な限り断熱性を高めることが重要だと考えています。
精度の良い施工が最も大切
また、ソフトでの計算結果は断熱材が正確に施工され100%の効果を発揮した際の数値となります。
気密性の確保も欠かせません。
現場での断熱施工をしっかりと行い、気密測定などを行う事で数値を検証することが大切となります。